田舎暮らしは憧れではすまない

田舎に住む幼友達はいつ「もうノイローゼになりそう!」と頭を抱え私に訴える、田舎に住むメリットはたくさんある、しかしデメリットはややこしい、都会でも人間関係は難しいが、田舎はもっと面倒だ、田舎の人の方が都会の人より優しいと思われがちだが、そうとも限らない。

幼友達の悩みとは、察しがつくだろうけど人間関係である、「どないしましたの?」と優しく聞いてみる「近所のおばさんが毎日来る」と言う、それは東京にいる私にしてもそうである「私のところも友達が毎朝来るよ」と軽く言ってみた「毎日だけど、何回もだよ!80過ぎのばーさんだよ」「居留守使えば?」と私が言う、今思えばノー天気な答えだ。

確かに東京のマンションに住んでいたら玄関は一つだし、オートロックなら誰が来たのかも一目で確認できるし、オートロックでなければのぞき穴から見ることが出来る、結構、居留守はカンタンだ、毎朝来る私の友人は「出たくないなら出なくていいから」と言ってくれる。

60歳半ばの幼友達のところに、その80歳過ぎのばぁ様は、毎日何度となく来て、玄関に出ていかなければ、家の周りをぐるりと回りながら、彼女を呼ぶそうだ、田舎は車社会ですから、車が車庫にあれば、彼女の在宅は明らかなのです、それに彼女が言うには「犬の散歩から帰ると必ず来るの」。

「80歳過ぎても、愚痴ばかり、毎日、ご近所さんの悪口ばかり同じ話を毎日、何回も何回もされてみてよ、たまらんでしょ!」と言う、田舎では、無下にお年寄りに対して、お断りを宣言することは難しいですから、きつくお断りを言おうものなら悪い評判が立ちます。

そのばぁ様は隣に住んでいるのですから、彼女も逃げられません、ここでは班で区切られていますから、班の中の人とは密な付き合いが求められます、年配ならお世話は当然なのです。

しかしながら、その幼友達は私が帰郷するや否や、待ってましたとばかりに、あらゆる愚痴を言います、時々かけてくる電話ではご近所さんの悪口ばかりなのです、誰しも自分のことは見ず、人の事ばかり気になるんですね、自分の生き方に徹して、上手く立ち回らないと田舎に限らず暮らすのは難しいです。

私の田舎では、過疎化はすざましい勢いで進んでいます、60歳半ばの彼女さえ若いうちに入るかもしてません、地区の面倒な仕事や力仕事はいつも頼まれ、会合には欠席はできません、個性的な生き方は噂の的になり、不祥事は孫の代まで語られてしまいます、彼女は若いころはやんちゃでしたから、色々と噂になりました、だから一層田舎暮らしが辛いのかもしれません。

都会では友達を選べる

毎朝、私のところに来る友人は、以前は朝の9時に来ていたので、2度寝が決まりの私には、迷惑でしたが、それを察してか2度寝から覚醒したころに来て、1時間程度のおしゃべりしたら、サッサと帰って行きます、「え!もう帰るの?」ってくらい、飾り気のない、おおざっぱな彼女ですから、私が朝食の片づけもせず、部屋が散らかっていようが、寝間着のような格好であろうが気にしないので私も気を使わなくて楽なんです。

そして、何より彼女は愚痴を言わないのです、経歴や生活に余裕があるからかもしれません、そんな我々に毎日、話すことがあるのかと思われるかもしれませんが、共通の話題が政治と世界情勢、環境問題、そんなこと言うと知識人のようですが、単なる政治の悪口みたいなものです、ですから、新しい情報を仕入れて待ち構えるので、惚け防止になるかもしれません。

最初のころは、朝早くからアポもなくやってくる彼女に、迷惑な奴、と内心では思っていましたが、今では感謝さえしています、家で引きこもり作業をしていることが多いし、マンションですから、隣の人とは交流はありません、ですから、話が合う彼女との短いおしゃべりは貴重な時間なのです、これが田舎だったら、付き合いはあの人ばっかり!と言われそうです。

老後の孤独は人を変える

彼女の毎朝の挨拶は「ボケ防止財団から参りました」と言って入ってきます、そんな友人が身近にいるのは楽しいものです、老後に話の合う友人は必須だと思うのです、話が合うのが一番ですがウマが合うとか、趣味が一緒とか、幼馴染とか、腐れ縁とか何でも良いので、老後の友人は捕まえておきましょう!

彼女は編み物が得意です、私も縫物が得意です、コラボで何かできないか模索しています、老後の楽しみはまだまだたくさんあります、他にも手に職を持つ友人が何人もいるので何か人のためになることがあるといいなと話しています。

孤独は人を変えます、私の従妹は生涯独身でした、優しい人でしたが、都会から田舎に帰って、一人暮らしを続けていくうちに人が変わりました、プライドが高く、ひがみっぽくなり、同情されまいと強情になり、周りから敬遠されてしまいました、孤独がそうさせたのだと思います、孤独にはならない事です、一人が好きでも、独りぼっちにはならない事です。